雪は良い。
東京に出て来た年。
新聞配達員として働いていた時。
寮の二階の窓から雪の降る街を見た。
電信柱や家を縫うように電線が繋がり、その線を白い大きなボタ雪が通り過ぎた。
街は雲で覆われ、薄暗く、なぜか雪だけが純白に、光っているようにすら見えた。
みるみるうちに街は白く輝くように変化した。
布団を被りながらその景色を見続けていた。
覚えている。
忘れてしまった数多くのこと。
素晴らしいモノ。
寒い朝、眠ってしまい、いつの間にか辿り着いた吉祥寺駅。
眠気を払いのけながら、なぜか浮かんだ雪の景色。
それはもう10年も前の記憶。
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